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「ゲンゲ」の版間の差分

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|名称 = ゲンゲ
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'''ゲンゲ'''(紫雲英、翹揺 {{Snamei|Astragalus sinicus}})は[[マメ科]][[ゲンゲ属]]に[[生物の分類|分類]]される[[越年草]]である。[[中国大陸|中国]]原産。'''レンゲソウ'''(蓮華草)、'''レンゲ'''、とも呼ぶ。

'''ゲンゲ'''(紫雲英、翹揺 {{Snamei|Astragalus sinicus}})は[[マメ科]][[ゲンゲ属]]に[[生物の分類|分類]]される[[越年草]]。[[中国大陸|中国]]原産。'''レンゲソウ'''(蓮華草)、'''レンゲ'''、とも呼ぶ。春の[[季語]]。かつて水田に[[緑肥]]として栽培され、現在でもその周辺に散見される。[[岐阜県]]の県花に指定されている

==特徴==
湿ったところに生える。全体に柔らかな草である。
湿ったところに生える。全体に柔らかな草である。

茎の高さ10-25 [[センチメートル|cm]]。根本で枝分かれして、暖かい地方では水平方向に[[茎|匍匐]]し、60-150 cmまで伸びる場合もある。茎の先端は上を向く。また、根本から一回り細い[[匍匐茎]]を伸ばすこともある。
茎の高さ10-25 [[センチメートル|cm]]。根本で枝分かれして、暖かい地方では水平方向に[[茎|匍匐]]し、60-150 cmまで伸びる場合もある。茎の先端は上を向く。また、根本から一回り細い[[匍匐茎]]を伸ばすこともある。

葉は一回[[羽状複葉]]、小葉は円形に近い楕円形、先端は丸いか、少しくぼむ。一枚の葉では基部から先端まで小葉の大きさがあまり変わらない。
葉は一回[[羽状複葉]]、小葉は円形に近い楕円形、先端は丸いか、少しくぼむ。一枚の葉では基部から先端まで小葉の大きさがあまり変わらない。

花茎は[[葉腋]]から出て真っ直ぐに立ち、葉より突き出して花をつける。花は先端に輪生状にひとまとまりにつく。花色は紅紫色だが、まれに白色(クリーム色)の株もある。
花茎は[[葉腋]]から出て真っ直ぐに立ち、葉より突き出して花をつける。花は先端に輪生状にひとまとまりにつく。花色は紅紫色だが、まれに白色(クリーム色)の株もある。
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Image:ゲンゲ.JPG|薄紫色のゲンゲ
Image:Astragalus sinicus genge01.jpg|全植物体
Image:Genge_07b4185.jpg|豆果(豆の莢、果実)
Image:Astragalus sinicus genge konryu.jpg|[[根粒]]
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== 利用など ==
== 利用・文化 ==
ゲンゲの花は、良い「[[蜂蜜|みつ]]源」になる。[[蜂蜜]]の源となる[[蜜源植物]]として利用されている。
ゲンゲの花は、良い「[[蜂蜜|みつ]]源」になる。[[蜂蜜]]の源となる[[蜜源植物]]として利用されている。
[[ギリシア神話]]では、祭壇に捧げる花を摘みに野に出た仲良し姉妹の話が有名。[[ニュンペー|ニンフ]]が変身した蓮華草を誤って摘んでしまった姉のドリュオペが、代わりに蓮華草に変わってしまう。「花はみな女神が姿を変えたもの。もう花は摘まないで」、と言い残したという。


=== 日本における利用・文化 ===
春の[[季語]]。
ゆでた若芽は食用にもなる(おひたし、汁の実、油いため他)。
ゆでた若芽は食用にもなる(おひたし、汁の実、油いため他)。
[[民間薬]]として利用されることがある(利尿や解熱など)。

ゲンゲの花を歌った[[童歌|わらべ歌]]もある。「[[春の小川]]」などが有名。
*[[民間薬]]として利用されることがある(利尿や解熱など)。
「手に取るな やはり野に置け 蓮華草」は、[[江戸時代]]に[[滝野瓢水]]が詠んだ[[俳句]]。[[遊女]]を[[身請]]しようとした友人を止めるために詠んだ句で、蓮華(遊女)は野に咲いている(自分のものではない)から美しいので、自分のものにしてはその美しさは失われてしまうという意味。転じて、ある人物を表舞台に立つべきではなかったと評する意味合いでも使われる([[荒舩清十郎]]の項目を参照)。
*ゲンゲの花を歌った[[童歌|わらべ歌]]もある。「[[春の小川]]」などが有名。

== 文化 ==
*[[ギリシア神話]]では、祭壇に捧げる花を摘みに野に出た仲良し姉妹の話が有名。[[ニュンペー|ニンフ]]が変身した蓮華草を誤って摘んでしまった姉のドリュオペが、代わりに蓮華草に変わってしまう。「花はみな女神が姿を変えたもの。もう花は摘まないで」、と言い残したという。
*「手に取るな やはり野に置け 蓮華草」は、[[江戸時代]]に[[滝野瓢水]]が詠んだ[[俳句]]。[[遊女]]を[[身請]]しようとした友人を止めるために詠んだ句で、蓮華(遊女)は野に咲いている(自分のものではない)から美しいので、自分のものにしてはその美しさは失われてしまうという意味。転じて、ある人物を表舞台に立つべきではなかったと評する意味合いでも使われる([[荒舩清十郎]]の項目を参照)。

== ゲンゲ畑 ==
[[化学肥料]]が使われるようになるまでは、[[緑肥]](りょくひ = 草肥:くさごえ)および[[ウシ|牛]]の飼料とするため、8-9月頃、稲刈り前の[[水田]]の水を抜いて種を蒔き翌春に花を咲かせていた。これは'''ゲンゲ畑'''と呼ばれ、[[昭和]]末頃までの「春の風物詩」であったが減少している。

畑は田植えの前に耕し、ゲンゲをそのまま鋤きこんで[[肥料]]とした。[[窒素]]を固定する([[大気]]中の[[窒素]]を取り込んで[[窒素肥料]]のようなかたちで蓄える)[[根粒菌]]の働きで、ゲンゲの根には球形の根粒がつく。ゲンゲの窒素固定力は強大で10 cmの生育でおおよそ10 [[アール (単位)|アール]] 1 [[トン|t]] の生草重、4-5 [[キログラム|kg]] の窒素を供給し得る。普通15ないし20 cmに成長するからもっと多くなるはずである。

乳牛を飼っているところでは、飼料とした。
乳牛を飼っているところでは、飼料とした。

[[休耕田]]の雑草防止策にもなった。ゲンゲの生える中に[[不耕起栽培|不耕起]]直播して乾田期[[除草剤]]を使わないですむ方法、ゲンゲの枯れぬうちに入水、強力な[[カルボン酸|有機酸]]を出させて雑草を枯死させる方法がある。ただしゲンゲは湿害に弱く、不耕起では[[連作|連作障害]]が起きかねず、アルファルファタコ[[ゾウムシ]]が大発生するなど難点もある。
[[休耕田]]の雑草防止策にもなった。ゲンゲの生える中に[[不耕起栽培|不耕起]]直播して乾田期[[除草剤]]を使わないですむ方法、ゲンゲの枯れぬうちに入水、強力な[[カルボン酸|有機酸]]を出させて雑草を枯死させる方法がある。ただしゲンゲは湿害に弱く、不耕起では[[連作|連作障害]]が起きかねず、アルファルファタコ[[ゾウムシ]]が大発生するなど難点もある。


==== ゲンゲ畑 ====
[[化学肥料]]が使われるようになるまでは、[[緑肥]](りょくひ = 草肥:くさごえ)および[[ウシ|牛]]の飼料とするため、8-9月頃、稲刈り前の[[水田]]の水を抜いて種を蒔き翌春に花を咲かせていた。これは'''ゲンゲ畑'''と呼ばれ、[[昭和]]末頃までの「春の風物詩」であったが減少している。かつて水田に[[緑肥]]として栽培され、現在{{いつ|date=2015年4月}}<!-- See [[WP:DATED]] -->でもその周辺に散見される。
畑は田植えの前に耕し、ゲンゲをそのまま鋤きこんで[[肥料]]とした。[[窒素]]を固定する[[大気]]中の[[窒素]]を取り込んで[[窒素肥料]]のようなかたちで蓄える[[根粒菌]]の働きで、ゲンゲの根には球形の根粒がつく。ゲンゲの窒素固定力は強大で10 cmの生育でおおよそ10 [[アール (単位)|アール]] 1 [[トン|t]] の生草重、4-5 [[キログラム|kg]] の窒素を供給し得る。普通15ないし20 cmに成長するからもっと多くなるはずである。
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Image:Wide Chinese milk vetch field- Japan.png|広いゲンゲ畑
Image:Wide Chinese milk vetch field- Japan.png|広いゲンゲ畑
Image:ゲンゲ.JPG|薄紫色のゲンゲ
Image:Astragalus sinicus genge01.jpg|全植物体
Image:Genge_07b4185.jpg|豆果(豆の莢、果実)
Image:Astragalus sinicus genge konryu.jpg|[[根粒]]
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== 地方公共団体の花に指定している自治体 ==
==== 地方公共団体の花に指定している自治体 ====
*[[愛媛県]][[西予市]](2006年2月1日制定)
* [[愛媛県]][[西予市]](2006年2月1日制定)
*[[岐阜県]]
* [[岐阜県]]
*[[山梨県]][[中巨摩郡]][[昭和町]]
* [[山梨県]][[中巨摩郡]][[昭和町]]


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
{{Commonscat|Astragalus sinicus}}
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{{Wikispecies|Astragalus sinicus}}
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*{{Yahoo!百科事典|レンゲソウ|author=星川清親・湯浅浩史}}
* {{Yahoo!百科事典|レンゲソウ|author=星川清親・湯浅浩史}}
*[http://had0.big.ous.ac.jp/~hada/plantsdic/angiospermae/dicotyledoneae/choripetalae/leguminosae/genge/genge.htm ゲンゲ]([http://had0.big.ous.ac.jp/~hada/plantsdic/zatsugakujiten.htm 植物雑学事典 岡山理科大学 波田研])
* [http://had0.big.ous.ac.jp/~hada/plantsdic/angiospermae/dicotyledoneae/choripetalae/leguminosae/genge/genge.htm ゲンゲ]([http://had0.big.ous.ac.jp/~hada/plantsdic/zatsugakujiten.htm 植物雑学事典 岡山理科大学 波田研])
*[http://bee.lin.gr.jp/ (社)日本養蜂はちみつ協会]
* [http://bee.lin.gr.jp/ (社)日本養蜂はちみつ協会]
*[http://www.nihonrengenokaisatoyoshihiro.jp/index.html 日本レンゲの会]
* [http://www.nihonrengenokaisatoyoshihiro.jp/index.html 日本レンゲの会]


[[Category:マメ科|けんけ]]
[[Category:マメ科|けんけ]]

2015年4月10日 (金) 19:38時点における版

ゲンゲ
ゲンゲ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : バラ類 rosids
階級なし : マメ類 fabids
: マメ目 Fabales
: マメ科 Fabaceae
亜科 : マメ亜科 Faboideae
: ゲンゲ属 Astragalus
: ゲンゲ A. sinicus
学名
Astragalus sinicus L.
和名
ゲンゲ
英名
Chinese milk vetch

ゲンゲ(紫雲英、翹揺 Astragalus sinicus)はマメ科ゲンゲ属分類される越年草である。中国原産。レンゲソウ(蓮華草)、レンゲ、とも呼ぶ。 湿ったところに生える。全体に柔らかな草である。 茎の高さ10-25 cm。根本で枝分かれして、暖かい地方では水平方向に匍匐し、60-150 cmまで伸びる場合もある。茎の先端は上を向く。また、根本から一回り細い匍匐茎を伸ばすこともある。 葉は一回羽状複葉、小葉は円形に近い楕円形、先端は丸いか、少しくぼむ。一枚の葉では基部から先端まで小葉の大きさがあまり変わらない。 花茎は葉腋から出て真っ直ぐに立ち、葉より突き出して花をつける。花は先端に輪生状にひとまとまりにつく。花色は紅紫色だが、まれに白色(クリーム色)の株もある。

利用・文化

ゲンゲの花は、良い「みつ源」になる。蜂蜜の源となる蜜源植物として利用されている。 ギリシア神話では、祭壇に捧げる花を摘みに野に出た仲良し姉妹の話が有名。ニンフが変身した蓮華草を誤って摘んでしまった姉のドリュオペが、代わりに蓮華草に変わってしまう。「花はみな女神が姿を変えたもの。もう花は摘まないで」、と言い残したという。

日本における利用・文化

春の季語。 ゆでた若芽は食用にもなる(おひたし、汁の実、油いため他)。 民間薬として利用されることがある(利尿や解熱など)。 ゲンゲの花を歌ったわらべ歌もある。「春の小川」などが有名。 「手に取るな やはり野に置け 蓮華草」は、江戸時代滝野瓢水が詠んだ俳句遊女身請しようとした友人を止めるために詠んだ句で、蓮華(遊女)は野に咲いている(自分のものではない)から美しいので、自分のものにしてはその美しさは失われてしまうという意味。転じて、ある人物を表舞台に立つべきではなかったと評する意味合いでも使われる(荒舩清十郎の項目を参照)。 乳牛を飼っているところでは、飼料とした。 休耕田の雑草防止策にもなった。ゲンゲの生える中に不耕起直播して乾田期除草剤を使わないですむ方法、ゲンゲの枯れぬうちに入水、強力な有機酸を出させて雑草を枯死させる方法がある。ただしゲンゲは湿害に弱く、不耕起では連作障害が起きかねず、アルファルファタコゾウムシが大発生するなど難点もある。

ゲンゲ畑

化学肥料が使われるようになるまでは、緑肥(りょくひ = 草肥:くさごえ)およびの飼料とするため、8-9月頃、稲刈り前の水田の水を抜いて種を蒔き翌春に花を咲かせていた。これはゲンゲ畑と呼ばれ、昭和末頃までの「春の風物詩」であったが減少している。かつて水田に緑肥として栽培され、現在[いつ?]でもその周辺に散見される。 畑は田植えの前に耕し、ゲンゲをそのまま鋤きこんで肥料とした。窒素を固定する(大気中の窒素を取り込んで窒素肥料のようなかたちで蓄える)根粒菌の働きで、ゲンゲの根には球形の根粒がつく。ゲンゲの窒素固定力は強大で10 cmの生育でおおよそ10 アール 1 t の生草重、4-5 kg の窒素を供給し得る。普通15ないし20 cmに成長するからもっと多くなるはずである。

地方公共団体の花に指定している自治体

外部リンク