「浄化槽」の版間の差分

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通常の戸建て住宅から排出されるし尿や雑排水を対象とする浄化槽を家庭用浄化槽、戸建て住宅以外の建築物用途から排出されるし尿や雑排水を対象とする浄化槽を一般浄化槽という<ref name="bcj">{{Cite web |url=https://www.bcj.or.jp/upload/rating/bizunit/hyoutei/joushi_hyoukahouhou.pdf |title= 浄化槽の性能評価方法(追記・解説版)|publisher=一般財団法人日本建築センター |accessdate=2024-01-03}}</ref>。
通常の戸建て住宅から排出されるし尿や雑排水を対象とする浄化槽を家庭用浄化槽、戸建て住宅以外の建築物用途から排出されるし尿や雑排水を対象とする浄化槽を一般浄化槽という<ref name="bcj">{{Cite web |url=https://www.bcj.or.jp/upload/rating/bizunit/hyoutei/joushi_hyoukahouhou.pdf |title= 浄化槽の性能評価方法(追記・解説版)|publisher=一般財団法人日本建築センター |accessdate=2024-01-03}}</ref>。


お、工場等は対象外であるが、従来の産業排水処理でも活性汚泥法などの生物処理法により処理されていた特定の業種(野菜缶詰・果物缶詰・農産保存食料品製造業、パン・菓子製造業、その他の食料品製造業)の小規模事業場の排水、例外的に浄化槽で受け入れることができるとされている<ref name="jeces01" />。
浄化槽は生物化学的処理装置のため温泉排水や工場などの特殊排水が流入すると機能障害を起こすことがある別途処理しなければならない<ref name="jcba">{{Cite web |url=http://www.jcba-net.jp/books/2015_6_jokasoshishin_honpen.pdf |title= 2015年版 浄化槽の設計・施工上の運用指針|publisher=日建築行政会議 |accessdate=2024-01-03}}</ref>。しかし、一部の事業場系排水について生活雑排水と併せて処理する方が合理的かつ効率的である<ref name="jcba" />。従来の産業排水処理でも活性汚泥法などの生物処理法により処理されていた特定の業種(野菜缶詰・果物缶詰・農産保存食料品製造業、パン・菓子製造業、その他の食料品製造業)の小規模事業場の排水については、例外的に浄化槽で受け入れることができるとされている<ref name="jeces01" />。


=== 各処理方式 ===
=== 各処理方式 ===
1998年(平成10年)の建築基準法改正<ref name="jcba" />、2000年の同法改正に伴う構造基準の性能規定化により<ref name="mat05" />、浄化槽は'''構造例示型'''(昭和55年建設省告示第1292号で示されたもの)と'''性能評価型'''(国土交通大臣の認定を受けたもの)に大別されることとなった(建築基準法施行令第35条)<ref name="jcba" />。この改正以降、性能評価型の浄化槽が大部分を占めるまでになっている<ref name="jcba" />。

==== BOD等処理 ====
浄化槽の分類の一つに[[生物化学的酸素要求量|BOD]]等の処理方法による分類があり<ref name="jcba" />、例えば小型合併処理浄化槽の場合には、BOD除去型、BOD・窒素除去型(赤潮等の原因となる[[窒素]]も除去)、BOD・窒素・リン除去型(同じく赤潮等の原因となる[[リン]]も除去)の3つに分けられる<ref>{{Cite web |url=https://yamagata-suisituhozen.or.jp/wp/q_a/1.pdf |title= 小型合併処理浄化槽のしくみ|publisher=公益社団法人山形県水質保全協会 |accessdate=2024-01-03}}</ref>。

==== 処理方法 ====
以下では型式適合認定に掲げられた処理方法について述べる<ref name="jcba" />。機器の型式適合認定番号はアルファベット記号で区分される(I、L、M、N、Oは大文字)<ref name="jcba" />。
* (a) 分離接触ばっき方式
** 告示区分第一<ref name="jcba" />
** 沈殿分離槽 + 接触ばっ気槽 + 沈殿槽 + 消毒槽<ref name="jcba" />
* (b) 嫌気濾床接触ばっき方式
** 告示区分第一<ref name="jcba" />
** 嫌気濾床槽 + 接触ばっ気槽 + 沈殿槽 + 消毒槽<ref name="jcba" />
* (c) 脱窒濾床接触ばっき方式
** 告示区分第一<ref name="jcba" />
** 脱窒濾床槽 + 接触ばっ気槽 + 沈殿槽 + 消毒槽<ref name="jcba" />
* (d) 回転板接触方式
** 告示区分第六<ref name="jcba" />
** 沈殿分離槽 + 回転板接触槽 + 沈殿槽 + 消毒槽(一例)<ref name="jcba" />
** 告示区分第三と第四の回転板接触方式については平成18年改正により削除<ref name="jcba" />。
* (e) 接触ばっ気方式
** 告示区分第六<ref name="jcba" />
** 沈殿分離槽 + 接触ばっ気槽 + 沈殿槽 + 消毒槽(一例)<ref name="jcba" />
** 告示区分第三と第四の接触ばっ気方式については平成18年改正により削除<ref name="jcba" />。
* (f) 散水濾床方式
** 告示区分第六<ref name="jcba" />
** 告示区分第三と第四の散水濾床方式については平成18年改正により削除<ref name="jcba" />。
* (g) 長時間ばっ気方式
** 告示区分第六<ref name="jcba" />
** 告示区分第三と第四の長時間ばっ気方式については平成18年改正により削除<ref name="jcba" />。
* (h) 標準活性汚泥方式
** 告示区分第六<ref name="jcba" />
** 告示区分第三の標準活性汚泥方式については平成18年改正により削除<ref name="jcba" />。
* (I) 接触ばっ気・濾過方式
** 告示区分第七<ref name="jcba" />
* (j) 凝集分離方式
** 告示区分第七<ref name="jcba" />
* (k) 接触ばっ気・活性炭吸着方式
** 告示区分第八<ref name="jcba" />
* (L) 凝集分離・活性炭吸着方式
** 告示区分第八<ref name="jcba" />
* (M) 硝化液循環活性汚泥方式
** 告示区分第九から第十一<ref name="jcba" />
* (N) 三次処理脱窒・脱燐方式
** 告示区分第九から第十一<ref name="jcba" />
* (O) その他の方式

==== 維持管理ガイドラインの対応 ====
構造基準の主な処理方式と維持管理ガイドラインの対応は以下のようになる<ref name="mat05" />。
構造基準の主な処理方式と維持管理ガイドラインの対応は以下のようになる<ref name="mat05" />。
* 小型合併処理浄化槽維持管理ガイドライン(平成5年衛浄第16号)<ref name="mat05" /><ref name="seikatsukankyo">{{Cite web |url=http://www.m-seikatsukankyo.or.jp/pdf/center/checking.pdf |title=浄化槽維持管理指導指針|publisher=公益社団法人 宮城県生活環境事業協会 |accessdate=2024-01-03}}</ref>。
* 小型合併処理浄化槽維持管理ガイドライン(平成5年衛浄第16号)<ref name="mat05" /><ref name="seikatsukankyo">{{Cite web |url=http://www.m-seikatsukankyo.or.jp/pdf/center/checking.pdf |title=浄化槽維持管理指導指針|publisher=公益社団法人 宮城県生活環境事業協会 |accessdate=2024-01-03}}</ref>。
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** 硝化液循環活性汚泥方式、三次処理脱窒・脱燐方式
** 硝化液循環活性汚泥方式、三次処理脱窒・脱燐方式


なお、2000年(平成12年)以降、膜分離活性汚泥法、生物ろ過法、担体流動法といった構造基準の例示にはない国土交通大臣の認定浄化槽があり、通称「性能評価型浄化槽」と呼ばれている<ref name="mat05" />。
なお、先述の通り、2000年(平成12年)以降、[[膜分離活性汚泥法]]、生物ろ過法、担体流動法といった構造基準の例示にはない国土交通大臣の認定浄化槽があり、通称「性能評価型浄化槽」と呼ばれている<ref name="mat05" />。


=== 技術の変遷 ===
==== 技術の変遷 ====
昭和44年構造基準(建設省告示1726号)を旧構造基準、昭和55年構造基準(建設省告示1292号)を新構造基準という<ref>{{Cite web |url=http://www.njsk.server-shared.com/honpen4.pdf |title= 4-1 浄化槽は維持管理が重要と言われていますが、何故ですか。|publisher=一般社団法人新潟県浄化槽整備協会 |accessdate=2024-01-03}}</ref>。
昭和44年構造基準(建設省告示1726号)を旧構造基準、昭和55年構造基準(建設省告示1292号)を新構造基準という<ref>{{Cite web |url=http://www.njsk.server-shared.com/honpen4.pdf |title= 4-1 浄化槽は維持管理が重要と言われていますが、何故ですか。|publisher=一般社団法人新潟県浄化槽整備協会 |accessdate=2024-01-03}}</ref>。
* 1969年 - 1980年:昭和44年構造基準の告示(建設省告示1726号)<ref name="mat05">{{Cite web |url=https://www.env.go.jp/council/former2013/03haiki/y039-18/mat05.pdf |title= 浄化槽に関する技術と維持管理の変遷|publisher=環境省 |accessdate=2024-01-03}}</ref>。
* 1969年 - 1980年:昭和44年構造基準の告示(建設省告示1726号)<ref name="mat05">{{Cite web |url=https://www.env.go.jp/council/former2013/03haiki/y039-18/mat05.pdf |title= 浄化槽に関する技術と維持管理の変遷|publisher=環境省 |accessdate=2024-01-03}}</ref>。
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: メーカーが独自に開発し、国土交通大臣の認定を受けた方式(国土交通大臣の認定浄化槽)の一つで、嫌気ろ床接触ばっ気方式に比べて容量が50 - 80%と小型化されている<ref name="jeces01" /><ref name="mat05" />。
: メーカーが独自に開発し、国土交通大臣の認定を受けた方式(国土交通大臣の認定浄化槽)の一つで、嫌気ろ床接触ばっ気方式に比べて容量が50 - 80%と小型化されている<ref name="jeces01" /><ref name="mat05" />。


=== みなし浄化槽 ===
<!-- 以下、出典のない節([[Wikipedia:出典を明記する]]参照)
第二次世界大戦後の日本では下水道の整備の立ち後れもあって、し尿処理技術が先行的に開発され進展し、便所の水洗化とともに水洗便所排水(し尿)だけを対象とする単独処理浄化槽が普及した<ref name="jeces01" />。しかし、単独処理浄化槽は合併処理浄化槽を利用している家庭と比較すると処理性能が劣り、生活雑排水が未処理放流となることなどからBODの総量を比較すると約8倍の汚濁物質を水環境中に排出している点が問題となっていた<ref name="jeces01" />。
== 処理方式 ==
=== 浄化槽(合併処理) ===
屎尿と併せて雑排水(生活系の汚水)を処理するもので、現行の法律で浄化槽と定められているもの。[[BOD]]除去率90%以上、放流水のBOD濃度20mg/L以下(浄化槽法施行規則より)であることが定められている。なお、「小型合併処理浄化槽」(5〜50人槽)は昭和63年に構造基準に追加されたものである。

過去には、BOD濃度60mg/L以下,30mg/L以下のものの構造が定められていたが、平成18年2月の法律改正に伴い構造基準より削除された。また、旧構造基準時は大型槽に限られていた。

また設置地域の水質規制等により、より厳しい放流水のBOD濃度や、BOD以外の水質項目(窒素、リン、COD)について水質を求められる場合があり、性能として示されている処理方式もある。なおこの場合「ろ過」、「凝集」などの物理処理装置が生物処理に付加して設置し、処理を行う。

処理方式として、「構造基準方式」(旧構造基準、新構造基準)と「性能評定方式」に分類される。

==== 構造基準方式====
[[建築基準法]]の「屎尿浄化槽構造基準」の改定時期により、旧構造基準(昭和44年〜56年、それ以前に設置されたものを含む)、新構造基準(昭和56年〜)に分類される(現在「構造基準」は、「建築基準法」の改正により「構造方法」(構造例示)として、構造の一つの方法として分類されている)。処理を構成する各単位装置は構造基準に定められた、構造、容量、名称のものを配置して槽を構成している(容量については槽の構造上、構造基準で定められた容量より大きく設計されているものもある)。

主な処理方式として
* 嫌気ろ床接触ばっ気方式(小型)【新】
* 分離接触ばっ気方式(小型)【新】
* 接触ばっ気方式【新】
* 長時間ばっ気方式【旧、新】
* 標準活性汚泥方式【旧、新】
* 散水ろ床方式【旧】
※ (小型):小型(小規模)合併浄化槽として構造基準に追加して、定められているもの(新構造基準)。【旧】:旧構造基準時に構造基準として定められていたもの。【新】:新構造基準として、構造基準に定められているもの。

===== 小規模槽 =====
小規模槽(小型合併浄化槽)の構造として、前処理装置の「嫌気ろ床槽」(沈殿分離槽にろ材を充填し、固液分離と併せ汚泥の捕捉と嫌気処理を行い、汚泥の減容化、分解性の向上を図っている)または「沈澱分離槽」を持ち、水処理装置の「接触ばっ気槽」及び「沈澱槽」を持つ。ばっ気槽及び沈澱槽より「汚泥返送装置」を持ち、水処理装置内で発生及び堆積した汚泥を前処理装置に戻す構造となっている(初期の頃のものは汚泥返送装置を持たないものもある)。

===== 中規模槽 =====
中規模槽の構造として、前処理装置に「沈殿分離槽」または「流量調整槽」+「汚泥貯留槽」を持ち以降の処理装置は小規模と同様の装置を持つ。なお、旧構造の装置では「沈殿分離槽」、「流量調整槽」を持たないものもある。

===== 大規模槽 =====
大規模槽の構造として前処理装置に「流量調整槽」+「汚泥貯留槽」を持ち以降の処理装置は小規模と同様の装置を持つ。なお、旧構造の装置では、「流量調整槽」+「汚泥貯留槽」を持たないものもある。

==== 性能評定方式 ====
処理を構成する各単位装置を製造メーカーが独自に構造、容量、名称を設定し、処理性能に関しての「性能評定試験」を行い認可、製造されているもの(構造基準上では「第13構造」(個別認定)として定められていたものである)。建築基準法の改定により製造、設置が可能になった。

近年製造、設置されている製品のほとんどは性能評定方式に依るものである。現在、性能評定の実施は日本建築センターが行っている。
; 主な処理方式
* 担体流動生物ろ過方式
* 回分活性汚泥方式
* [[膜分離活性汚泥法|膜分離活性汚泥方式]]
※ 処理方式の名称は各製造メーカーが独自に定めているため、上記の名称とは必ずしも一致しない。

性能評定方式の槽の総容量は構造基準方式に比べ80〜50%程度である。

派生型として、高濃度対応型(ディスポーザー汚泥対応型や主に屎尿汚水のみの流入対応型、窒素、リン、CODに性能値をもつ処理方式)のものもある。

===== 小規模槽 =====
前処理装置の「沈澱分離機能」の固液分離機能の向上を図るため、「ろ過機能の向上」(充填ろ材の汚泥捕集性の向上)、「ピークカット流量調整機能」(設計流入水量の5〜20%程度の水量を固液分離槽内に一時貯留し、水処理装置へ定量移送)を用いている。水処理装置に「担体」(小型(1cm3程度)のプラスチックの管体やスポンジなど)を充填し、曝気攪拌による生物処理を行っている。表面積が大きいため付着生物量が多く、効率的な処理が行える。また、装置内には静止部を設け、ろ過機能を併せ持ち固液分離を行う。処理に伴い発生する汚泥は、静止部下部より循環装置および汚泥移送装置により前処理装置へ移送・貯留する。また、曝気装置にタイマーを設置し、自動運転にて「ばっ気と循環」・「逆洗と汚泥移送」の切り替えを行い処理性能を維持しているものもある。

===== 中規模槽 =====
固液分離機能(小規模槽と同様の機能)または流量調整機能(設計水量の50%程度の水量を貯留し、定量的に水処理装置に移送する)と水処理装置(主に担体流動生物ろ過)を組み合わせ、処理装置を構成している。100人槽程度までは固液分離機能、それ以上は流量調整機能を採用する場合が多い。

===== 大規模槽 =====
流量調整機能と併せて、水処理装置内の組み合わせとして
# 活性汚泥+液中膜(RO膜)を充填し、吸引ろ過により処理を行う。
# 活性汚泥+回分処理(ばっ気槽をばっ気工程、沈澱工程、排出工程と制御し処理を行う)
# 担体流動生物ろ過(小型、中型槽と同様の構造のもの)
を組み合わせたものもある。また1、2については処理工程中に硝化脱窒槽を設置したものや、水処理薬剤を直接水処理装置内に添加する事により、処理性能の高度化を図っているものもある。

なお、構造基準方式とは「施工」、「維持管理」、「清掃」の方法が異なるため、製造メーカーは「施工要領書」、「維持管理要領書」を発行し、その実施方法を提示している。

=== みなし浄化槽(単独処理) ===
屎尿(便所からの汚水)のみを処理するもので、[[生物化学的酸素要求量]](BOD)除去率65%以上、放流水のBOD濃度90mg/L以下であることが定められている。


そこで、単独処理浄化槽については、下水道予定処理区域内(終末処理を有するもの)を除いて、平成13年([[2001年]])4月1日以降の新設が禁止された<ref name="jcba" />。
平成13年([[2001年]])4月1日以降の新設が禁止され<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.env.go.jp/recycle/jokaso/data/law/lawp06.html|title=単独処理浄化槽の新設禁止について|accessdate=2020年8月19日|publisher=環境省}}</ref>、平成18年2月の法律改正時に浄化槽の定義が変更されたことに伴い、構造基準より削除された。浄化槽法上では「浄化槽とみなす」と定義されている。


既存単独処理浄化槽については以下の規定が置かれている。
なお、既設のみなし浄化槽(単独処理)については、下水道等の計画が無い地区に設置されているものについては、浄化槽(合併処理)への転換を図る事を努力することが求められている(浄化槽法附則)。
* 昭和55年建設省告示第1292号第1第一号から第三号までの規定に適合する構造のものについては、改正後の建築基準法第31条第2項の国土交通大臣が定めた構造方法を用いたものとみなされる(平成12年建設省告示第1465号附則)<ref name="jcba" />。
* その他の既存単独処理浄化槽についても、法律による設置や維持管理等の規制を及ぼす必要があるため、浄化槽法第2条第一号に規定する浄化槽とみなされる(浄化槽法の一部を改正する法律附則第2条)<ref name="jcba" />。


これらの規定による浄化槽を「みなし浄化槽」という<ref name="jeces01" />。
設置人槽としては、2000人槽までが構造基準で定められているが、大型槽については腐敗型のものがほとんどである。


旧制度では単独処理浄化槽や合併処理浄化槽以外に、単独処理浄化槽に生活雑排水を処理する浄化槽を別に接続してBOD除去率90%以上、放流水のBOD濃度20mg/L以下とする変則合併処理浄化槽と呼ばれるものがあった<ref name="jeces01" />。単独処理浄化槽は原則として廃止されているが、基準を満たせば、このような方法で活用することは可能とされている<ref name="jeces01" />。
==== 旧構造基準型 ====
; 主な処理方式
*腐敗型
** 平面酸化方式
** 散水ろ床方式
固液分離装置の「腐敗室」と水処理装置の「散水ろ床」(砕石等のろ材を充填し、その表面に生物膜を形成し水を処理する方式。均等な散水を確保するため、上部に樋を設置し樋の切り欠き部より、腐敗室よりの流出水を均等に散水する)及び「平面酸化」(平面的に配した流路に生物膜を形成し、腐敗室よりの流出水を流路中に生物膜を形成する)を持つ。ばっ気装置等の機械装置を持たないため、容量が大きく取られている。腐敗処理を伴うため発生する臭気の拡散と槽内の通風を確保するため臭突を設置する。槽の容量確保のために処理装置を深くするため、放流側にポンプを設置し放流する場合がある。


=== 浄化槽の規模 ===
*曝気型(ばっ気型)
一基の浄化槽が受け入れ可能な負荷(処理対象人員)は「人槽」という単位で表現され、その算定方法は JIS A 3302-2000の「建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準」に定められている<ref name="jeces01" />。浄化槽の最小は家庭用小型浄化槽の5人槽で、最大は38,500人槽の[[関西国際空港]]の浄化槽といわれている<ref name="jeces01" />。
** 全曝気方式(全ばっ気方式)
** 分離曝気方式(分離ばっ気方式)
固液分離装置の「沈澱分離室」と水処理装置の「曝気室(ばっ気室)」及び「沈澱室」を持つ。水処理装置に「曝気装置(ばっ気装置、空気を送り込むブロワーと散気装置)」を設置し、常時曝気することにより処理の効率化を図り、装置の小型化に貢献している。なお、全曝気方式は「沈澱分離室」を持たない。


新たに施工される浄化槽の大部分が先述の性能評価型であるが<ref name="jcba" />、総容量が構造例示型の70%程度のものをコンパクト型浄化槽、50%程度まで小さくしたものを超コンパクト型浄化槽という<ref name="jeces01" />。
旧構造基準の装置は大型化への対応や、安定した処理水質の維持、使用ピーク時の対応が難しい状況があった。また処理に伴い臭気が発散する状況があったため、処理の安定化と処理規模の大型化への対応を含めた構造基準の改定が行われた。


==== 新構造基準型 ====
== 設置と管理 ==
=== 設置 ===
; 主な処理方式
浄化槽には工場生産のものを据え付ける主にFRP製の工場生産浄化槽と、現場で施工する鉄筋コンクリート製の現場打ち浄化槽がある<ref name="jeces01" />。現場打ち浄化槽は強度があり、槽の形状や水深も設置場所に合わせることができるが、設置工事費や工期が長くなる傾向があるため、通常は501人槽以上の規模の場合に用いられる<ref name="jeces01" />。
* 分離曝気方式(分離ばっ気方式)
* 分離接触曝気方式(分離接触ばっ気方式)
固液分離装置の「沈澱分離室」と水処理装置の「曝気室(ばっ気室)」及び「接触曝気室(接触ばっ気室)」及び「沈澱室」を持つ。なお、「沈澱分離室」容量は旧構造基準のものに比べ大きく設定している。


=== 保守点検 ===
水処理装置の「接触曝気室(接触ばっ気室)」は、曝気室内に「接触材」を充填し、生物膜を形成し処理を行っている(同能力(人槽)の分離曝気方式の曝気室に比べ小型である)。
浄化槽法では保守点検を「浄化槽の点検、調整またはこれらに伴う修理をする作業をいう。」と定める<ref name="jeces01" />。
-->
<!-- 以下、出典のない節([[Wikipedia:出典を明記する]]参照)
== 人槽 ==
処理能力の単位で、何人用のものかを示す。最小のものは「5人槽」(浄化槽、みなし浄化槽とも同じ)であり、
* 浄化槽:1.0 [[立方メートル|m<sup>3</sup>]]/日(一人当たり一日水量0.2m<sup>3</sup>、流入BOD濃度200mg/L)
* みなし浄化槽:0.25m<sup>3</sup>/日(一人当たり一日水量0.05m<sup>3</sup>、流入BOD濃度260mg/L)
を標準としている(括弧内の数値は標準的な設計をする時に用いる数値)。


=== 清掃 ===
設置する浄化槽の人槽を決定する方法として、[[日本工業規格|JIS]]規格(JIS A3302-2000「建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準」)により建築物の用途や床面積毎の人槽の算出方法や、用途毎の床面積あたりの水量や流入BOD濃度が定められている。ただし、必ずしもJISの算定方法と実態の流入状況が一致するものではなく、使用実態として一人あたりの使用水量が設計より多い場合や、設置人槽より使用人員が多い場合や少ない場合および高濃度汚水が流入する場合など、水質の維持が困難な事例が見受けられる(多い場合の事例として、[[モレラ岐阜]]参照)。このためJISでは例外事項を設け、類似施設および実際の使用状況を考慮した設計ができることとなっている。
浄化槽の槽内に蓄積した過剰な汚泥を引き出したり、微生物の濃度を調整する作業を清掃という<ref name="jeces01" />。引き出しを伴わない作業、単位装置や付属機器類の洗浄・掃除は、定期的に行うことと定められた清掃には該当しない<ref name="jeces01" />。


なお、規模の大・中・小として、
* 小規模:5〜50人槽
* 中規模:51〜200人槽
* 大規模:201人槽以上
と一般的には分類している。
-->
== 設置基数 ==
== 設置基数 ==
2022年3月末時点での設置基数は、約752万基で設置基数のうち、52.5%が合併浄化槽である(約395万基)<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.env.go.jp/press/press_01313.html |title=令和3年度における浄化槽の設置状況等について |accessdate=2023年8月27日 |publisher=環境省}}</ref>。
2022年3月末時点での設置基数は、約752万基で設置基数のうち、52.5%が合併浄化槽である(約395万基)<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.env.go.jp/press/press_01313.html |title=令和3年度における浄化槽の設置状況等について |accessdate=2023年8月27日 |publisher=環境省}}</ref>。

2024年1月3日 (水) 23:01時点における版

浄化槽(じょうかそう)とは、一般家庭等から出る生活排水を嫌気性処理と好気性処理の双方を利用して浄化する分散型汚水処理技術[1]

浄化槽は日本で独自に開発された汚水処理設備である[1][2]。浄化槽は各戸で排水処理を行う分散処理の一方式であるが、分散処理の設備として世界的に主流となっているのはより簡易な構造の腐敗槽(セプティック・タンク)である[3]。浄化槽の内部は複数の槽に分かれ嫌気性処理と好気性処理の双方を利用するが、開発途上国などで使用されている腐敗槽(セプティック・タンク)は消毒槽や沈殿槽などの分化(処理工程)がなく、嫌気性処理のみを利用する設備である[1]

歴史

浄化槽(合併処理浄化槽)本体
合併処理浄化槽の設置例

日本における生活排水の処理システムには、代表的なものに下水道、農業集落排水施設、浄化槽がある[4]。このうち浄化槽は歴史的には下水道を利用できない地域において、便所を水洗化する場合に設置しなければならない設備として定義されてきた[4]。そのため便所の排水だけを処理する「単独処理浄化槽」と台所、洗面所、風呂場などを含め家庭から出る排水をまとめて処理する「合併処理浄化槽」の二本立てとされていたが、浄化槽法の改正により単独処理浄化槽は2001年(平成13年)4月からは原則として新設することができなくなった[5]。これにより浄化槽法上の「浄化槽」の定義も改められ、浄化槽の定義から単独処理浄化槽に該当する文言を削除し、既設の単独処理浄化槽は「みなし浄化槽」として法律を適用し維持管理等を行うことになった[4](後述)。

20世紀

第二次世界大戦後、大都市圏では都道府県または保健所設置市に届出を行うだけで設置できる「共同浄化槽」が設置されるようになったが、当初は進駐軍の駐屯兵舎や軍人軍属用住宅の設営時に水洗便所を設置する際の汚水処理のために施工されたといわれる[4]。この「共同浄化槽」は昭和30年代からの日本住宅公団による住宅団地の造成によって設置が本格化していった[4]。浄化槽は建築基準法と汚物掃除法で規制されていたが、1954年(昭和29年)に汚物掃除法にかわり清掃法が制定され、さらに水槽便所取締規則が廃止されるとともに新たに浄化槽の維持管理基準が定められた[4]

1965年(昭和40年)、清掃法の一部改正とそれに伴う政省令の全面改正が行われ、法令で「単独処理浄化槽」と「合併処理浄化槽」が明記された[4]

1966年(昭和41年)には公害審議会(当時)が「し尿処理施設およびその管理に関する基準」を厚生大臣(当時)に答申し、「し尿は西欧なみに水洗便所によって処理することを第一の目的とすべきである。」とし、公共下水道を軸に浄化槽の普及を促進することが記され、答申は閣議決定された[4]

技術的には昭和30年代中頃までの浄化槽は現場打ちやコンクリート管組み立ての設備だったが、それ以後はガラス繊維強化プラスチック(FRP、Fiberglass Reinforced Plastics)製のばっ気型浄化槽が主流となり、工場で大量生産されたものを住宅に設置するようになったため単独処理浄化槽の普及が進んだ[4]。一方で普及が先行して、法律や行政、業界による対応が追い付かず、設備の不適切な設置や管理により、公共用水域の水質汚濁源となる例や、悪臭や騒音などの問題が地域住民間でのトラブルの原因につながる例も発生して社会問題化した[4]。そのため浄化槽行政の一元的運営や浄化槽関係者の責任を明確にするための資格付与を目的に、1977年(昭和52年)5月に全国浄化槽団体連合会(全浄連)が結成された[4]

1982年(昭和57年)8月には浄化槽法案が議員立法として提出され、1983年(昭和58年)5月に浄化槽法が成立し、1985年(昭和60年)10月に全面施行された[4]。浄化槽法の成立により、製造、設置、保守点検や清掃など規制が強化され、浄化槽設備士や浄化槽管理士の身分資格が確立された[4]

21世紀

単独処理浄化槽については昭和40年代後半から公共用水域の汚濁源になっているという指摘があり、合併処理浄化槽を利用する過程と比較するとBODの総量で約8倍の汚濁物質を水環境中に排出しているとされ課題になった[4]

そこで2001年(平成13年)に「浄化槽法の一部を改正する法律」が施行されて単独処理浄化槽の新設は原則として廃止された[4]。同法施行に先立って同年2月には単独処理浄化槽の出荷が停止された[4]

法令

日本の現行法(2001年改正以降の浄化槽法)における「浄化槽」とは「合併処理浄化槽」のことを指す[注 1]。2001年(平成13年)の法改正以前に設置された単独処理浄化槽(し尿のみを処理する浄化槽)については、「みなし浄化槽」に分類される[7][8][9]。また、浄化槽の目的として、旧法(改正以前)、および「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」および「清掃法」(浄化槽法施行前は同法が浄化槽について、監理していた)では、汚水の衛生処理伝染病の予防、蔓延の防止など)を置いていたが、現行法ではこれと併せて環境保全についても浄化槽設置の目的としている[注 2]

製造

浄化槽の構造・容量については構造基準が定められているほか、浄化槽のメーカーは国土交通大臣の認定(型式認定制度)を受けなければ製造することができない[5]

設置

水洗化のために従来の設備を改造して浄化槽を設置する場合には都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区では市長又は区長)への届出等が必要である[5]

また、住宅の新築に伴い浄化槽を設置する場合には、建築基準法により建築主事の確認を受ける必要がある[5]

工事

工事は都道府県知事の登録を受けた浄化槽工事業者(届出制)が行うこととされている[5]

浄化槽の工事は、設置等の届出から21日(国土交通大臣の型式認定を受けた浄化槽の場合は10日)を経過するか、都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区では市長又は区長)及び特定行政庁から工事を着手してよい旨の通知を受けた後でなければ着工は認められない[5]

浄化槽設備士の国家資格を持つ者が工事又はその監督を行う必要があり、環境省令・国土交通省令で定めている「浄化槽工事の技術上の基準」に従って行う必要がある[5]

使用

浄化槽管理者は、使用を開始してから30日以内に使用開始報告書を都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区では市長又は区長)に提出する必要がある[5]

使用にあたっては浄化槽の正常な機能を維持するため「浄化槽の使用に関する準則」が定められている[5]

保守点検

保守点検業務を行う国家資格に浄化槽管理士があり、通常、保守点検業の登録を受けた企業などに所属している[5]

浄化槽管理者は環境省令で規定される「保守点検の技術上の基準」に従って定期的に保守点検を行う必要があるが、専門的な知識や技術が必要なため、都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区では市長又は区長)の登録を受けた保守点検業者に委託することができる(横浜市と大阪市では保守点検業の登録制度が設けられていないため浄化槽管理士に直接委託することができる)[5]

清掃

保守点検と同様に、浄化槽管理者は環境省令で規定される「清掃の技術上の基準」に従って定期的に清掃を行う必要があるが、専門的な知識や技術が必要なため、市町村長の許可を受けた浄化槽清掃業者に委託することができる[5]

清掃の回数は毎年1回(全ばっき方式の浄化槽は、おおむね6ヶ月ごとに1回以上)とされている[5]

法定検査

  • 使用開始後の水質に関する検査(7条検査) - 浄化槽管理者は、使用開始後3ヶ月を経過した日から5ヶ月の間に、都道府県知事の指定する指定検査機関が行う水質に関する検査を受ける必要があるが、その浄化槽を設置した浄化槽工事業者に委託することができる[5]
  • 定期検査(11条検査) - 浄化槽管理者は、毎年1回、指定検査機関の水質検査を受ける必要があるが、その浄化槽の保守点検又は清掃を行う者に委託することができる[5]

廃止

浄化槽管理者は、浄化槽を廃止してから30日以内に廃止届出を都道府県知事に提出する必要がある[5]

構造と形式

対象の排水

浄化槽法第2条第1号によると浄化槽は「し尿及びこれと併せて雑排水(工場廃水、雨水その他の特殊な排水を除く。以下同じ。)を処理」する設備である[4]。浄化槽が対象とする家庭からの排水は、水洗便所排水、台所排水、洗濯排水、風呂場からの排水などであるが、設置場所には集会場、ホテル、医療施設、店舗、マーケット、学校施設などを含む[4]

通常の戸建て住宅から排出されるし尿や雑排水を対象とする浄化槽を家庭用浄化槽、戸建て住宅以外の建築物用途から排出されるし尿や雑排水を対象とする浄化槽を一般浄化槽という[11]

浄化槽は生物化学的な処理装置のため温泉排水や工場排水などの特殊排水が流入すると機能障害を起こすことがある別途処理しなければならない[12]。しかし、一部の事業場系排水については生活雑排水と併せて処理する方が合理的かつ効率的である[12]。従来の産業排水処理でも活性汚泥法などの生物処理法により処理されていた特定の業種(野菜缶詰・果物缶詰・農産保存食料品製造業、パン・菓子製造業、その他の食料品製造業)の小規模事業場の排水については、例外的に浄化槽で受け入れることができるとされている[4]

各処理方式

1998年(平成10年)の建築基準法改正[12]、2000年の同法改正に伴う構造基準の性能規定化により[13]、浄化槽は構造例示型(昭和55年建設省告示第1292号で示されたもの)と性能評価型(国土交通大臣の認定を受けたもの)に大別されることとなった(建築基準法施行令第35条)[12]。この改正以降、性能評価型の浄化槽が大部分を占めるまでになっている[12]

BOD等処理

浄化槽の分類の一つにBOD等の処理方法による分類があり[12]、例えば小型合併処理浄化槽の場合には、BOD除去型、BOD・窒素除去型(赤潮等の原因となる窒素も除去)、BOD・窒素・リン除去型(同じく赤潮等の原因となるリンも除去)の3つに分けられる[14]

処理方法

以下では型式適合認定に掲げられた処理方法について述べる[12]。機器の型式適合認定番号はアルファベット記号で区分される(I、L、M、N、Oは大文字)[12]

  • (a) 分離接触ばっき方式
    • 告示区分第一[12]
    • 沈殿分離槽 + 接触ばっ気槽 + 沈殿槽 + 消毒槽[12]
  • (b) 嫌気濾床接触ばっき方式
    • 告示区分第一[12]
    • 嫌気濾床槽 + 接触ばっ気槽 + 沈殿槽 + 消毒槽[12]
  • (c) 脱窒濾床接触ばっき方式
    • 告示区分第一[12]
    • 脱窒濾床槽 + 接触ばっ気槽 + 沈殿槽 + 消毒槽[12]
  • (d) 回転板接触方式
    • 告示区分第六[12]
    • 沈殿分離槽 + 回転板接触槽 + 沈殿槽 + 消毒槽(一例)[12]
    • 告示区分第三と第四の回転板接触方式については平成18年改正により削除[12]
  • (e) 接触ばっ気方式
    • 告示区分第六[12]
    • 沈殿分離槽 + 接触ばっ気槽 + 沈殿槽 + 消毒槽(一例)[12]
    • 告示区分第三と第四の接触ばっ気方式については平成18年改正により削除[12]
  • (f) 散水濾床方式
    • 告示区分第六[12]
    • 告示区分第三と第四の散水濾床方式については平成18年改正により削除[12]
  • (g) 長時間ばっ気方式
    • 告示区分第六[12]
    • 告示区分第三と第四の長時間ばっ気方式については平成18年改正により削除[12]
  • (h) 標準活性汚泥方式
    • 告示区分第六[12]
    • 告示区分第三の標準活性汚泥方式については平成18年改正により削除[12]
  • (I) 接触ばっ気・濾過方式
    • 告示区分第七[12]
  • (j) 凝集分離方式
    • 告示区分第七[12]
  • (k) 接触ばっ気・活性炭吸着方式
    • 告示区分第八[12]
  • (L) 凝集分離・活性炭吸着方式
    • 告示区分第八[12]
  • (M) 硝化液循環活性汚泥方式
    • 告示区分第九から第十一[12]
  • (N) 三次処理脱窒・脱燐方式
    • 告示区分第九から第十一[12]
  • (O) その他の方式

維持管理ガイドラインの対応

構造基準の主な処理方式と維持管理ガイドラインの対応は以下のようになる[13]

  • 小型合併処理浄化槽維持管理ガイドライン(平成5年衛浄第16号)[13][15]
    • 分離接触ばっ気方式・ 嫌気ろ床接触ばっ気方式
  • 窒素除去型小型合併処理浄化槽維持管理ガイドライン(平成12年衛浄第43号)[13][15]
    • 脱窒ろ床接触ばっ気方式
  • 中・大型合併処理浄化槽維持管理ガイドライン(平成12年衛浄第43号)[13][15]
    • 回転板接触方式・接触ばっ気方式・散水ろ床方式・長時間ばっ気方式・標準活性汚泥方式
  • 高度処理型合併処理浄化槽(平成8年衛浄第22号)[13][15]
    • 接触ばっ気・ろ過方式、凝集分離方式
    • 接触ばっ気・活性炭吸着方式、凝集分離方離・活性炭吸着方式
    • 硝化液循環活性汚泥方式、三次処理脱窒・脱燐方式

なお、先述の通り、2000年(平成12年)以降、膜分離活性汚泥法、生物ろ過法、担体流動法といった構造基準の例示にはない国土交通大臣の認定浄化槽があり、通称「性能評価型浄化槽」と呼ばれている[13]

技術の変遷

昭和44年構造基準(建設省告示1726号)を旧構造基準、昭和55年構造基準(建設省告示1292号)を新構造基準という[16]

  • 1969年 - 1980年:昭和44年構造基準の告示(建設省告示1726号)[13]
    • 処理方式として活性汚泥法散水ろ床法が定められた[13]
  • 1980年 - 1988年:昭和55年構造基準の告示(建設省告示1292号)[13]
    • 処理方式として回転板接触法接触ばっ気法が追加された[13]
    • 単独処理浄化槽の平面酸化床方式と全ばっ気方式を廃止[4]
  • 1988年 - 1995年:構造基準の一部改正[13]
    • 処理対象人員5~ 50人規模の合併処理浄化槽処理方式として分離接触ばっ気方式嫌気ろ床接触ばっ気方式が追加された[13]
  • 1995年 - 2000年:構造基準の一部改正[13]
    • 処理対象人員の規模に応じて、新たに脱窒ろ床接触ばっ気方式などが追加された[13]
  • 2000年:建築基準法改正に伴う構造基準の性能規定化[13]

代表的方式

嫌気ろ床接触ばっ気方式
この方式は小型浄化槽の開発時に基本となった、嫌気ろ床槽と接触ばっ気槽を組み合わせた方式で、1988年(昭和63年)に構造基準に追加された[4]。排水中の固形物を沈殿や浮上の作用を利用して水から分離することを沈殿分離といい、そのために設置される2室直列の槽を沈殿分離槽という[4]。特に槽内にろ材を置いて固形物の通過時に捕えたり、それに付着した微生物の力で分解する構造のものを嫌気ろ床槽という[4]。さらに次の接触ばっ気槽で好気性微生物により有機物質を分解して汚水を処理するが、槽内の有機物質を栄養源に生物膜が付き、その生物膜が脱落して流れ出ないように次の沈殿槽で沈殿させる[4]。そして最終的に消毒槽で固形塩素剤で消毒して放流する[4]
生物ろ過方式
メーカーが独自に開発し、国土交通大臣の認定を受けた方式(国土交通大臣の認定浄化槽)の一つで、嫌気ろ床接触ばっ気方式に比べて容量が50 - 80%と小型化されている[4][13]

みなし浄化槽

第二次世界大戦後の日本では下水道の整備の立ち後れもあって、し尿処理技術が先行的に開発され進展し、便所の水洗化とともに水洗便所排水(し尿)だけを対象とする単独処理浄化槽が普及した[4]。しかし、単独処理浄化槽は合併処理浄化槽を利用している家庭と比較すると処理性能が劣り、生活雑排水が未処理放流となることなどからBODの総量を比較すると約8倍の汚濁物質を水環境中に排出している点が問題となっていた[4]

そこで、単独処理浄化槽については、下水道予定処理区域内(終末処理を有するもの)を除いて、平成13年(2001年)4月1日以降の新設が禁止された[12]

既存単独処理浄化槽については以下の規定が置かれている。

  • 昭和55年建設省告示第1292号第1第一号から第三号までの規定に適合する構造のものについては、改正後の建築基準法第31条第2項の国土交通大臣が定めた構造方法を用いたものとみなされる(平成12年建設省告示第1465号附則)[12]
  • その他の既存単独処理浄化槽についても、法律による設置や維持管理等の規制を及ぼす必要があるため、浄化槽法第2条第一号に規定する浄化槽とみなされる(浄化槽法の一部を改正する法律附則第2条)[12]

これらの規定による浄化槽を「みなし浄化槽」という[4]

旧制度では単独処理浄化槽や合併処理浄化槽以外に、単独処理浄化槽に生活雑排水を処理する浄化槽を別に接続してBOD除去率90%以上、放流水のBOD濃度20mg/L以下とする変則合併処理浄化槽と呼ばれるものがあった[4]。単独処理浄化槽は原則として廃止されているが、基準を満たせば、このような方法で活用することは可能とされている[4]

浄化槽の規模

一基の浄化槽が受け入れ可能な負荷(処理対象人員)は「人槽」という単位で表現され、その算定方法は JIS A 3302-2000の「建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準」に定められている[4]。浄化槽の最小は家庭用小型浄化槽の5人槽で、最大は38,500人槽の関西国際空港の浄化槽といわれている[4]

新たに施工される浄化槽の大部分が先述の性能評価型であるが[12]、総容量が構造例示型の70%程度のものをコンパクト型浄化槽、50%程度まで小さくしたものを超コンパクト型浄化槽という[4]

設置と管理

設置

浄化槽には工場生産のものを据え付ける主にFRP製の工場生産浄化槽と、現場で施工する鉄筋コンクリート製の現場打ち浄化槽がある[4]。現場打ち浄化槽は強度があり、槽の形状や水深も設置場所に合わせることができるが、設置工事費や工期が長くなる傾向があるため、通常は501人槽以上の規模の場合に用いられる[4]

保守点検

浄化槽法では保守点検を「浄化槽の点検、調整またはこれらに伴う修理をする作業をいう。」と定める[4]

清掃

浄化槽の槽内に蓄積した過剰な汚泥を引き出したり、微生物の濃度を調整する作業を清掃という[4]。引き出しを伴わない作業、単位装置や付属機器類の洗浄・掃除は、定期的に行うことと定められた清掃には該当しない[4]

設置基数

2022年3月末時点での設置基数は、約752万基で設置基数のうち、52.5%が合併浄化槽である(約395万基)[17]

設置人槽別としては20人槽以下のもの(主に住宅用として用いられている)が91%を占める。また構造別としては旧構造基準のものが約87万基を占め、急速に普及していることが窺える状況である[18]。令和元年に調査結果により、合併処理浄化槽の設置基数は単独処理浄化槽を上回ったと公表された。

ただし、設置基数については、設置の状況が明確ではなく(下水道へ接続後の廃止届が提出されていないもの、未届けで設置されているもの、設置届けが重複し提出されているもの等がある)、設置数の信憑性については不明である。[要出典]

主な浄化槽製造メーカー(OEM販売を除く)

日本国外への技術移転

中国

中国江蘇省常熟市では地形的要因から、下水道の建設コストが非常に高くなるため、市がオンサイト処理に転換することを決定し、東青村の3つの農業集落で日本の浄化槽55基を導入することになり、2013年から浄化槽のモデル事業が行われた[23]

マレーシア

浄化槽実証事業として平成26年度環境省「アジア水環境改善モデル事業」に採択され、老朽化したオンサイト処理施設の更新時に日本の浄化槽を設置することとなった[23]

インド

2018年4⽉に「日本・インド高級事務レベル環境協力会合」がデリーで開催され、2018年10月には環境分野に関する協力覚書が署名され、その主な分野に「浄化槽・水質管理」が含まれている[24]

技術移転の課題

技術移転の課題としては、行政の予算不足、メンテナンス費用の問題、適正な法規制の未整備、製造から工事、メンテナンスに関する業界がないことなどが挙げられる[25]。そのため、現地化(独資会社や合弁会社の設立)、現地適格型浄化槽の開発、扱いやすいシンプルなデザイン、知的財産保護、技術者の養成、関係機関との協力などが課題になっている[25]

インドネシア

インドネシアのバリ島では下水道普及率が低いため、2017年6月~2018年2月にかけて「バリ州における浄化槽の包括的な維持管理体制の構築による水環境改善案件化調査」が実施され、そこでは汚水処理技術向上を目指した教育と人材育成事業、浄化槽の状態を遠隔地から監視できる「IoTセンサー」の開発が行われた[26]

脚注

注釈

  1. ^ 浄化槽法の第2条は浄化槽を「便所と連結して し尿及びこれと併せて雑排水(工場廃水、雨水その他の特殊な排水を除く。以下同じ。)を処理し、下水道法 [...] 第二条第六号に規定する終末処理場を有する公共下水道([...])以外に放流するための設備又は施設であって、[...] 市町村が設置した し尿処理施設以外のものをいう。」と定める[6]
  2. ^ 現行の浄化槽法第1条は法の目的を「この法律は、浄化槽の設置、保守点検、清掃及び製造について規制するとともに、[...] 等により、公共用水域等の水質の保全等の観点から浄化槽による し尿及び雑排水の適正な処理を図り、もって生活環境の保全及び公衆衛生の向上に寄与することを目的とする。」と定め、目的の筆頭に「生活環境の保全」を置いている[10]

出典

  1. ^ a b c 浄化槽の基本構造と特長”. 環境省. 2024年1月3日閲覧。
  2. ^ 片山徹 (2006年9月22日). “[資料3] 浄化槽の海外展開について” (pdf). 環境省. 2018年8月29日閲覧。 ※pdf配布元は環境省ウェブサイト「中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会 浄化槽専門委員会(第19回)議事要旨・資料(平成18年9月22日開催)」ページ。リンク「資料3 (社)海外環境協力センター資料」を参照。
  3. ^ 古市昌浩 (2017年1月). “浄化槽の海外展開における技術的課題と展望 - 技術データ JSAだより”. 一般社団法人浄化槽システム協会. 2018年8月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年8月29日閲覧。 ※初出は『月刊浄化槽』2017年1月号。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am 第1章 生活排水と水環境の保全”. 公益財団法人日本環境整備教育センター. 2024年1月3日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 1.浄化槽のしくみ”. 一般社団法人 全国浄化槽団体連合会. 2024年1月3日閲覧。
  6. ^ 浄化槽法(昭和58年法律第43号) - e-Gov法令検索
  7. ^ [資料3] 説明資料 : 見なし浄化槽に係る規定” (pdf). 環境省. p. 2 (2005年6月15日). 2018年8月29日閲覧。 ※pdf配布元は環境省ウェブサイト「中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会 浄化槽専門委員会(第2回)議事要旨・資料(平成17年6月15日開催)」ページ。リンク「資料3 説明資料」を参照。
  8. ^ 浄化槽の種類”. 有限会社相模湖水質管理センター. 2023年8月20日閲覧。 “●単独処理浄化槽みなし浄化槽) 単独処理浄化槽はトイレの汚水のみを処理し、浄化する浄化槽です。BOD除去率65%以上、放流水のBOD濃度90mg/L以下であることが定められています。[...] 下記は、作られた年代の順にあげています。”
  9. ^ 浄化槽で生活雑排水まできれいにしましょう”. 公益財団法人日本環境整備教育センター. 2023年8月20日閲覧。 “平成13年4月より施行された改正浄化槽法によって、みなし浄化槽の新設が禁止され、新たに設置できるのは浄化槽のみとなりました。”
  10. ^ 浄化槽法(昭和58年法律第43号) - e-Gov法令検索
  11. ^ 浄化槽の性能評価方法(追記・解説版)”. 一般財団法人日本建築センター. 2024年1月3日閲覧。
  12. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj 2015年版 浄化槽の設計・施工上の運用指針”. 日本建築行政会議. 2024年1月3日閲覧。
  13. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 浄化槽に関する技術と維持管理の変遷”. 環境省. 2024年1月3日閲覧。
  14. ^ 小型合併処理浄化槽のしくみ”. 公益社団法人山形県水質保全協会. 2024年1月3日閲覧。
  15. ^ a b c d 浄化槽維持管理指導指針”. 公益社団法人 宮城県生活環境事業協会. 2024年1月3日閲覧。
  16. ^ 4-1 浄化槽は維持管理が重要と言われていますが、何故ですか。”. 一般社団法人新潟県浄化槽整備協会. 2024年1月3日閲覧。
  17. ^ 令和3年度における浄化槽の設置状況等について”. 環境省. 2023年8月27日閲覧。
  18. ^ (添付資料)令和2年度における浄化槽の設置状況等ついて [PDF 1.0 MB]”. 環境省. 2023年8月27日閲覧。
  19. ^ http://www.daikan-k.com 2019年12月1日閲覧。
  20. ^ https://www.fujiclean.co.jp 2019年12月1日閲覧。
  21. ^ http://www.daie-industry.co.jp 2019年12月1日閲覧。
  22. ^ http://www.e-ams.co.jp 2019年12月1日閲覧。
  23. ^ a b 雲川新泌. “浄化槽システムの海外展開戦略について”. 一般社団法人海外環境協力センター. 2024年1月3日閲覧。
  24. ^ インドでの大気・水質環境における課題〜環境省によるインドとの環境協力〜”. 環境省地球環境局. 2024年1月3日閲覧。
  25. ^ a b 北井良人. “浄化槽の海外ビジネス展開について”. 一般社団法人浄化槽システム協会. 2024年1月3日閲覧。
  26. ^ ここからが本番 浄化槽を生かす要は“メンテナンス”インドネシア”. 独立行政法人国際協力機構. 2024年1月3日閲覧。

関連項目

外部リンク