経過措置
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
経過措置(けいかそち)とは、新しく別の法律や制度などに移行する際に生じる不利益や不都合を極力減らすために取られる一時的な措置のこと[1]。
概要
法令を改正もしくは廃止する場合、既存の法律を考慮することなく急に新たな法律を適用すると、それまでの法律に基づいて営まれてきた社会生活が混乱することになる。そのため、新しい法律に移行する際、一定の期間に限り既存の法律の適用をある程度認める等の規定を置くことがある。このような規定を経過規定といい、通常、附則に置かれる。経過規定の中には、二つの規定がある。ひとつは「なお従前の例による」で、もうひとつは「なおその効力を有する」である。両者は、既存の法律の存置という点については、ほぼ同じ効果を有するが、両者には異なる点もある。まず第一に、改正又は廃止前の法令が適用される根拠が異なる。「なお従前の例による」の場合、改正又は廃止前の法令自体は失効していて、「なお従前の例による」という規定が適用の根拠となっているが、「なおその効力を有する」の場合、改正又は廃止前の法令が効力を有するとされているので、当該改正又は廃止前の法令自体が適用の根拠となる。第二に、効力の及ぶ範囲が異なる。「なお従前の例による」の場合、当該法律のほかに政令、省令といった下位の法令に関する経過規定は不要だが、「なおその効力を有する」の場合、効力を有するのはあくまで当該法律だけなので、当該法律に基づく政省令があるときは、それらについては別に経過規定を設ける必要がある。第三に、改正又は廃止前の法令を改正できるか否かが違います。「なお従前の例による」の場合、改正又は廃止前の法令は失効しているので、改正は不可能だが、「なおその効力を有する」の場合、改正又は廃止前の法令は効力を有するため、改正することができる。