利用者:さかおり/第3回秋の加筆コンクール審査及び採点

このページは、Wikipedia:第3回秋の加筆コンクールの分野C審査を、私さかおりが務めさせて頂いたことに関連して作成したものです。

第3回秋の加筆コンクール
第3回秋の加筆コンクール
第3回秋の加筆コンクール
第3回秋の加筆コンクール
第3回秋の加筆コンクール

初めて審査員を務めさせていただきましたが、審査の基準をどのようなものにすれば良いのか非常に悩みました。執筆コンクールと加筆コンクールとでは、何が違うのかを考えました。

執筆コンクールにしても加筆コンクールにしても、コンクールを行う究極の目的は、記事の質の向上に他ならないと思います。複数の編集者、エントリー者が互いに切磋琢磨して良い意味で競い合うことは、日本語版wikipediaの質を高めるモチベーションを維持し続けていく上で、とても意義のあることだと感じました。

採点基準

加筆コンクールである以上、審査の主眼点は差分の質に置きたいと考えます。GA選考、FA選考などのように、純粋に記事全体の仕上がりを評価するのと、加筆コンクールでの評価のポイントは別であると思います。たとえば、加筆する前から完成度の高い記事への加筆と、スタブ状態を加筆した記事とを単純に比較して評価することは出来ないと思います。

従いまして、今回の加筆コンクールでの評価基準は、差分の質に採点配分のウェイトを置きました。

  1. 総合的な完成度(30点) - 文章は平易で読みやすいか。記事全体の構成、節の構成などは問題がないか。参考文献の提示、脚注を用いた出典提示など、検証可能性は担保されているか。テーマについて知識のない読者が読んでも、ある程度全体像を理解することの出来る内容であるか。全体的な記事の仕上がりの採点も行いますが、以下に示す加筆差分での評価ウェイトを高く設定したため、最終的な総合点は逆転する場合もあります。
  2. 加筆前と加筆後の差分(計70点) -ここで言う差分とは単純なバイト数の増減ではなく、あくまでも加筆前と比較して記事の質がどれだけ向上したかを評価します。
    1. 文章・内容(内訳30点/70点) - 加筆前と比較して、記事の主題について深く掘り下げ、説明すべき事項がより的確に網羅されたか、目を見張るような質の向上があったかを評価します。
    2. 構成スタイル(内訳15点/70点) - 加筆前と比較して、全体的なレイアウト、節わけ構成などにより、可読性が向上したかを評価します。
    3. 画像・図・表など(内訳5点/70点) - 加筆前と比較して、記述の理解を助ける画像などが効果的に使用されているか。ただし画像の乏しい主題もあることから、点数配分は低く設定します。
    4. 出典・検証可能性(内訳20点/70点) - 加筆前と比較して、参考文献、脚注を用いた出典が追加され、検証可能性が向上したかを評価します。
以上を合計した総合点の満点は100点となります。なお、私の個人的な主観ですが、おおむね90点以上でFAクラス、80点以上でGAクラスといったイメージです。(今回の採点では加筆された差分に重きを置いています)

結果

順位 記事名 総合完成度 加筆内容 加筆構成 加筆画像 加筆出典 総合点数
1 ミラビリス・リベル 28/30 28/30 15/15 5/5 19/20 95/100
2 ニュルンベルクのマイスタージンガー 28/30 29/30 12/15 5/5 19/20 93/100
3 ハイセイコー 29/30 28/30 14/15 3/5 18/20 92/100
4 エルヴィン・シュルホフ 25/30 26/30 14/15 4/5 15/20 84/100
5 ノストラダムス 29/30 15/30 14/15 5/5 19/20 82/100

採点

  • ハイセイコー - 92点。加筆前の段階でも、おおまかな概要を知ることは出来ましたが、加筆によりこの名馬の生涯、とりまく人間との係わり合いなど、細部にわたり深く内容が掘り下げられ、記事としてほとんど完成されたように思います。あとはハイセイコーの生前の姿を捉えた画像があれば完璧でしょう。無いものねだりかもしれませんが、いつか画像の提供がされることを期待したいと思います。
  1. 総合的な完成度 - 29/30点 - ほとんど完成されており、ほぼ満点に近いものと思います。
  2. 加筆前と加筆後の差分(計70点満点)
    1. 文章・内容 - 28/30点 - 加筆された内容は、この主題を理解する上で重要と思われるものばかりですし、文章も平易で読みやすく、多くの人が利用する百科事典において優れた文章、記述であると思います。
    2. 構成スタイル - 14/15点 - 大幅な加筆に伴い、節の入れ替え、節分けなどがされていますが、おおむね適切なもので、可読性も問題ありません。
    3. 画像・図・表など - 3/5点 - 年度別の種付け頭数および、誕生産駒数や種牡馬成績の表を作成されたことを評価します。
    4. 出典・検証可能性 - 18/20点 - 複数の参考文献を新たに提示され、脚注方式で詳細に出典を付けられたことを高く評価します。
  • 結果 29+(28+14+3+18)=92


  1. 総合的な完成度 - 28/30点 - 各節ごとの内容はほぼ完成されたものと思います。全体的な構成については、節名を含め改善の余地があるかもしれません。
  2. 加筆前と加筆後の差分(計70点満点)
    1. 文章・内容 - 29/30点 - 楽曲作曲にまつわる経緯を、深く掘り下げた点を評価したいと思います。この楽曲に関することは、およそ網羅されており、百科事典として読み応えのある優れた記事であります。
    2. 構成スタイル - 12/15点 - 作曲の経緯から、楽曲の詳細、さらに上演史、録音まで多様な内容を含むこの記事を、どのような構成にするのか難しいことであったと思います。執筆者さんも恐らく苦労されたことと思います。
    3. 画像・図・表など - 5/5点 - 豊富な画像、さまざまな主題の楽譜、さらに日本語訳台詞の引用に至るまで多彩な画像や表が追加され、記事内容を理解するのに実に効果的です。
    4. 出典・検証可能性 - 19/20点 – 加筆前には参考文献、出典などが全く無い状態でしが、今回の加筆により、検証可能性が大きく満たされたことは大きな評価点とします。
  • 結果 28+(29+12+5+19)=93


  • エルヴィン・シュルホフ - 84点。今回の分野Cエントリー記事中では小粒ではありますが、加筆前と比較すると、この人物について百科事典として説明されるべきことはおおむね記載され、加筆効果は高いと評価します。
  1. 総合的な完成度 - 25/30点 - 文章は平易で読みやすく、構成も問題ありませんが、この人物の概要の説明にとどまっており、もう一歩踏み込んだ今後の更なる加筆を期待します。
  2. 加筆前と加筆後の差分(計70点満点)
    1. 文章・内容 - 26/30点 - 文章、内容とも、良くまとまっており、人物記事として十分良質な記事の水準に達しているものと思います。
    2. 構成スタイル - 14/15点 - 生涯、作風、作品とシンプルにまとまった分かりやすい構成になっており、wikipedia記事スタイルの、お手本とも言える良質な構成であると思います。
    3. 画像・図・表など - 4/5点 - 画像情報の少ないと思われる主題ではありますが、作品節では楽曲ジャンルごと年代順に、表を作成されたことによって可読性が向上した点を評価します。
    4. 出典・検証可能性 - 15/20点 – この記事も加筆前には出典が全く無かったことを考えると、参考文献と脚注を用いた出典提示が行われた点は評価します。ただ日本語文献が全く無いのが少々気がかりです。日本語文献が無ければいけないというわけでは決してありませんが、ウィキペディア日本語版では日本語による情報源を極力使用すべき(Wikipedia:検証可能性#情報源/ソース)との考え方があり、日本語文献があったほうがより好ましいと思います。信頼足りうる日本語文献、書籍などによる出典付けを今後期待します。
  • 結果 25+(26+14+4+15)=84


  • ミラビリス・リベル - 95点。今回の分野Cエントリー5記事の中で、加筆されたことによって最も大きく変化した記事であり、加筆前と加筆後を比較すると全く別の新記事であるかのような印象を受けます。一般的には馴染みの薄い主題なだけに、加筆前の記事を読んだだけでは一体どのような加筆の余地があるのか分かりませんでした。ところが加筆された内容は素晴らしいもので、この主題をここまで深く掘り下げ、まとめられた執筆者の手腕に感服いたしました。
  1. 総合的な完成度 - 28/30点 - 文章は読みやすいものの、内容がやや専門的な主題を扱ったものであるため、一読しただけでは少々難解ではあります。その辺りの表現を平易に記述することが出来れば、より優れた記事になるのでしょうけれど、中世ヨーロッパの人名など固有名詞が多く使われるテーマである以上、それを求めるのは難しい注文かもしれません。
  2. 加筆前と加筆後の差分(計70点満点)
    1. 文章・内容 - 28/30点 – 全33章にも及ぶ「ミラビリス・リベルの構成節」は圧巻で、執筆者のこの記事に対する並々ならぬ情熱を感じました。主題に関する説明すべき事項は、ほとんど網羅されていると思います。繰り返しになりますが、加筆により目覚しく質が向上しており高く評価します。
    2. 構成スタイル - 15/15点 - 概要節から始まり、主題の「ミラビリス・リベルの構成節」へ続くと思いきや、その前に前提節を設けることによって、これから詳細に解説される「ミラビリス・リベルの構成節」を俯瞰するかのようなセクション構成は見事で、このような工夫が読み手の理解を助ける大きな効果になっていると思います。その後続く、成立年代、編者、出版、影響、研究史のセクションの配置も見事です。
    3. 画像・図・表など - 5/5点 - およそ考えられる関連画像を効果的に配し、出版節では表を作成されています。
    4. 出典・検証可能性 - 19/20点 – 参考文献を、全体に係るもの、所収の各文書に係るもの、影響などに係るものに分離し提示した点は高く評価されます。注釈による補足、脚注を用いた出典提示も非常に優れています。
  • 結果 28+(28+15+5+19)=95


  • ノストラダムス - 82点。加筆される以前よりFA記事であり、総合的な完成度は優れたものであることは言うまでもありませんが、加筆コンクールの趣旨を考えた、加筆されたことによる質の向上という意味では、採点は厳しいものになってしまいました。
  1. 総合的な完成度 - 29/30点 - 今回の加筆により、最も大きな変化は何と言ってもノストラダムスの肖像画節でしょう。複数の肖像画が存在することと、それらが描かれた経緯を楽しく読ませていただきました。
  2. 加筆前と加筆後の差分(計70点満点)
    1. 文章・内容 - 15/30点 - 出自に関するもの、晩年から墓に関するもの、各節における細かな修正などが施され、秀逸な記事に更なる肉付けがされましたが、元々がFA記事という完成度の高い記事なだけに、加筆により劇的に質が向上したかどうかという審査基準を、他のエントリー記事と相対的に比較した場合の評価は低めにさせていただきました。繰り返しになりますが、総合的な完成度が高いことは言うまでもありません。
    2. 構成スタイル - 14/15点 - 加筆以前の秀逸なレイアウトを維持しつつ、可読性を損なわないよう丁寧に再構成されたと思います。
    3. 画像・図・表など - 5/5点 - この加筆に関しては、ノストラダムスの肖像画節の完成度の高さから、高評価とします。
    4. 出典・検証可能性 - 19/20点 – 参考文献の追加、加筆した内容に対する出典付けも適切です。
  • 結果 29+(15+14+5+19)=82

感想

初めてのコンクール審査ということで、最初は不安がありました。しかし、選考を通じ複数の優れた記事を熟読することにより、今後の執筆を続けていく上で多くのことを学ばせて頂けたと、審査が終わった今は満足しております。

今回、分野Cの5記事を審査させて頂きましたが、どの記事も非常にレベルが高く、エントリーされた皆様の力量に圧倒されてしまいました。結果は上記の通りとさせて頂きましたが、個人的にはどの記事も既存のGA記事、あるいはFA記事と比較してもなんら遜色のない高い品質の記事であると思います。(私自身が執筆した記事は別として)wikipediaの記事をこれほど熟読したのは初めてで、各記事とも読み込めば読み込むほど、それぞれの素晴らしさがあり、これらに順位をつけるのは本当に辛いものがありました。

改めて、今回エントリーされた皆様をはじめ、運営委員、審査員の皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。