姫川亜弓
姫川 亜弓(ひめかわ あゆみ)は美内すずえの漫画『ガラスの仮面』に登場する架空の女優。北島マヤのライバル兼もう1人のヒロイン。
来歴[編集]
大女優と有名映画監督との間に生まれた、演劇界のサラブレッド。容姿端麗で演技の才能もあり、学力優秀で身体能力も極めて高い。日本舞踊の名取で、ピアノの腕前は中学生でラフマニノフのピアノ協奏曲[1]で賞を取るなど演劇以外の演芸分野にも秀でており、料理上手でもあるなどきわめて多才である。紅茶はクィーンメリーが好き[2]。
小学校から名門・聖華学園で学び、現在、大学部演劇学科に在籍している。
人物[編集]
恵まれた環境に生まれ育ち周囲から常に天才と評されてきたが、実は名声の裏側では人知れず血のにじむような努力を積み、周囲に自分を認めさせてきた誇り高き苦労人。親の威光に依らず自身の実力で評価されたいと幼い頃から渇望しており、それゆえに生まれ持った美貌や才覚に慢心することなく、積み重ねた努力によって自分自身の実力を評価されることを望んでいる。芸の鬼であり、役の本質をつかむためにはあらゆる手段を模索し、どんな苦労や負担も厭わない。そのため、自分自身の実力で勝負せず、不正な手段や謀略によって他人を蹴落とし名声を掠め取ろうとする卑怯な役者を嫌う。不正に対する嫌悪感は自分自身にも例外なく向けられており、父親のコネを使って望む役を手に入れたのはマヤを陥れた乙部のりえへの復讐のために彼女と同じ舞台に立った時のみである。
本能的に役の本質をつかむことのできるマヤとは対照的に、経験に裏打ちされた洞察力や観察力で役の本質を探り、試行錯誤を繰り返しながら地道に役柄を構築していくタイプ。冷静かつ理知的な性格もあって公演で失敗したことはなく、とっさの出来事にも対応できるだけの順応力と機転にも優れる[3]。
当初はマヤの実力に脅威を感じるあまりに嫌味な態度を見せることもあった[4]が、彼女の実力を認めるようになってからはそのような態度を取ることはなくなり、逆にマヤを侮って馬鹿にする人間を一喝する場面もある。また、乙部のりえがマヤから主演の座を奪い取ったTVドラマのVTRを見た感想をスタッフに求められた際は「マヤに演技がそっくりだけどただそれだけ。自分自身の心が入っていない演技は飽きられる」と一蹴し、マヤが天性の才能の持ち主であることを他人の前でハッキリと口に出して認めている。
演技の実力は月影千草からも十二分に認められるものであり、世間からの評価も終始マヤより優位に立っている。しかし、本人は一度もそう思ったことはなく、天性の才能を持つマヤとの差に幾度となく敗北感を感じ、内心では強い羨望と嫉妬心が渦巻いている(演技の才能の他、単なる取り巻きではない、心から信頼し合える仲間がいることも羨ましがっていた)。そんな胸中でありながらも、マヤとは互いを認め合う良きライバルであり続け、マヤにとっては最大の理解者でもある。マヤを芸能界失脚させた乙部のりえに演技で制裁を下した娘の思いを知った父親も、娘とマヤとの間に生まれた絆を感じ取っていたほどである。
梅の谷の試演においてマヤが演じる『紅天女』に圧倒され一度は『紅天女』を諦め、千草の元を去ろうとする。去る前に最後に梅の谷を見に行こうとした時に橋が壊れていると忠告され、自分は助かったものの直後に梅の谷に向かおうとしたマヤが橋を渡ろうとしているのを目撃した際、彼女への嫉妬心から橋のことを言い出せずに見捨てようとしてしまう。結果的には橋から落ちかけたマヤを見捨てられずに助け出すが、自身の中に芽生えていた醜い感情を自覚し愕然とすることになる。しかし、逆にそれをきっかけにあらゆることを努力によって掴み取ってきた今までの人生を思い返し、自分の持てる全ての力をふりしぼって正々堂々と『紅天女』に挑戦しようと思い直す。そして、その後には橋で彼女を見捨てようとしたことも含めてマヤと本音をぶつけ合ったことで改めてお互いをライバルとして認め合い、『紅天女』を実力で掴み取ることを堂々と宣言する。
その後、稽古の最中に団員を庇って倒れた機材の直撃を受け、そのときの衝撃が元で視神経に異常をきたす。医師からは『紅天女』を諦めて治療に専念するよう忠告されたがそれを拒否し、目が見えなくても演技が行えるよう、母親の下で特訓を受ける。現在は目の異常を周囲に隠しながら(知っている人物は母親・歌子、梅乃ばあや、演出家の小野寺、一真役の赤目、写真家のハミル)、他の出演者と共に『紅天女』の稽古を続けている。
主な出演作品[編集]
舞台[編集]
- たけくらべ ・・・美登利役。
- 吉原の廓に住む地元の子供達のリーダー格の少女。
- 灰の城・・・高波美弥役。
- 没落華族の家に生まれながら、姫君として誇り高く生きていこうとする少女の物語。
- 美女と野獣・・・野獣の使い魔役。
- 養護施設慰問劇の端役で、この役を演じる団員が決まらなかったところに役作りの幅を広げるため自ら手を挙げた。[5]。
- 王子と乞食・・・エドワード王子役とトム役(二役)。
- この時亜弓は役作りのため、自慢の髪を自らショートカットに切り落とし、更に街頭のホームレスに交じって実際の乞食のように振る舞うという徹底した役作りを行った。
- 夢宴桜・・・海堂寺月代役。
- 海堂寺男爵家が栄華の絶頂から崩壊していくまでのさまを描いた作品。
- 奇跡の人・・・ヘレン・ケラー役。
- マヤとのダブルキャスト。サリバン先生役は姫川歌子。
- 朱の彼方・・・アーニャ役。
- 実の叔父に恋する少女の物語。
- カーミラの肖像・・・吸血鬼カーミラ役。
- 幼いころに遭遇した吸血鬼に再会した伯爵夫人の恐怖を描く。マヤの仇を取るために、初めて親の力を借りて役を手に入れた芝居。主演の乙部のりえを演技力で圧倒し、彼女の不正な手段で手に入れた評価を地に落とした。
- 夜叉姫物語・・・玉姫役。
- 領民に過酷な仕打ちをおこない、夜叉姫と怖れられた玉姫の物語。
- 一人芝居・ジュリエット・・・ジュリエット役。
- ロミオとジュリエットをジュリエットの視点から描く。
- 赤いマント・・・エマ役。
- 病弱で弱い少女が赤いマントを身につける事で勇気ある強い少女になる姿を見事に演じ分けた。「親の七光り」と劇団員から仲間外れにされていた亜弓の、本当の実力が認められた作品[6]。劇団オンディーヌ児童部研究発表会作品。
- 不明・・・仙女役。
- 学芸会の主役。亜弓を組み込むことで話題作りを狙い、シナリオを改変した商業演劇「アシよペンをとれ」を断って、学芸会の方を選んだ[6]。
- ふたりの王女・・・王女オリゲルド役。
- 北欧の小国を舞台に、何不自由なく育った美しい妹アルディス、謀反人の娘として監獄の中で育った陰鬱な姉オリゲルドという2人の異母姉妹の王女の対立と葛藤を描いた舞台。
- これまで2人が演じてきた役柄とイメージからマヤが激しい人生を歩むオリゲルド、亜弓が可憐な美少女であるアルディスを演じると周囲は考えていたが、皇太后役として同舞台への出演が決まっていた月影の提案によりあえてマヤがアルディス、亜弓がオリゲルドを演じる事に決定した。
テレビドラマ[編集]
- 虹の記憶・・・聖子役。
- 記憶喪失となった少女・聖子が自分の「家族」とされる家庭内で次第に追い詰められていくさまを描いたミステリードラマ。
映画[編集]
その他の出演など[編集]
- 服飾メーカー主催のちびっこコンテストで前評判の高かった小原百合子を抑えて1位を入賞。しかし姫川夫妻の七光りによる宣伝効果を念頭に置いた審査基準だった[6]。
受賞歴[編集]
- アカデミー芸術祭芸術大賞 - 「一人芝居・ジュリエット」のジュリエット役で。
- 不明 - 「ゼロへの逃走」で特別賞を受賞。共演者の堀口武士も主演男優賞を同作品で受賞している[6]。
演じた人物[編集]
- 女優
- 声優
- その他
脚注[編集]
- ^ ガラスの仮面 「冬の星座」より。正確な番号は作品中、記述されていない。
- ^ ガラスの仮面 「炎のエチュード」ではクィーン・メリー、「冬の星座」ではクイーンメリーと表記されている
- ^ 夢宴桜で海堂寺千絵役の代役を頼まれたマヤが台本をすり替えられて正しい筋を演じられなくなった際、とっさに舞台に出て巧みにマヤをリードしそのシーンの筋通りの流れに導いて場を繋いだ。
- ^ 中学生時代に劇団つきかげと「たけくらべ」を演じ合うことになった際には、上演がつきかげの先になったのをいいことにマヤに向かって「お先に失礼」と言い放って笑いながら立ち去っており、居合わせた麗に不快感を抱かれている。
- ^ ガラスの仮面 「春の嵐」より。
- ^ a b c d e ガラスの仮面 「100万の虹」より。
- ^ 役名は記載されていない。